看護師が退職する際に直面するトラブル10選
看護師が退職する際によく直面するトラブルには、さまざまなものがあります。以下に、よくある退職トラブルを10選をご紹介します。
看護師の退職トラブル10選と解決策
①退職時期をめぐる問題
看護師不足:多くの医療機関は看護師不足に悩んでおり、一人でも多くの看護師を確保したいという事情があります。
退職を申し出ても、後任の採用や引き継ぎが困難なため、職場側は退職日を引き延ばしたがることがよくあります。
緊急性のある業務: 医療現場では急患対応や緊急手術など、常に人手が必要です。そのため、退職を申し出た看護師がすぐに辞めてしまうと業務に大きな支障が出るため、退職日を職場側が制約する場合が多いです。
退職手続きの認識の違い:看護師の退職に関する手続きについて、職場と看護師の間で認識の違いが生じることがあります。
就業規則では1ヶ月前の申し出で退職可能とされている場合でも、職場側が「3ヶ月前」などの条件を暗黙のルールとして求めることもあります。
<トラブル回避のための準備>
証拠を残す:退職の申し出や職場側とのやり取りをメールなどで残しておきましょう。万が一、退職の手続きを妨げられた場合に証拠として活用できます。
転職エージェントの活用:転職エージェントを利用すると、退職手続きのアドバイスや、新しい職場への調整サポートを受けることができ、トラブルを軽減できる場合があります。
②退職理由への圧力
人手不足の医療現場:看護師は特に人手不足が深刻な職種です。
人材の確保が難しいため、管理者や上司は退職者の理由を詳しく知り、今後の対策に生かしたいと考えます。
また、できれば退職を阻止しようとするため、理由を深掘りしがちです。
業務の特殊性と責任感:医療現場では患者への責任が重いため、「なぜこのタイミングで辞めるのか」「代わりに誰が対応するのか」など、業務の引き継ぎや影響を考慮し、退職理由について確認を求められます。
人間関係の問題:看護師の職場では、チームワークが不可欠です。
退職者が出ると残されたチームメンバーへの負担が増えるため、他の同僚や上司から「なぜ辞めるのか」と理由を聞かれることがよくあります。特に、職場の環境が理由の場合、正直に答えにくい場面もあります。
<トラブル回避のための準備>
退職理由を事前に準備する:どのように退職理由を伝えるかを、事前に整理しておくと、実際に質問されたときに冷静に対応できます。
退職の目的を再確認する:退職の理由が明確であり、自分にとってその決断が重要であると確信することで、圧力に対してより強い意志を持って臨むことができます。
事前のリサーチ:他の退職者がどのようにして退職理由を伝えたか、どのような反応があったかをリサーチすると、参考になります。先輩や知人の体験を聞いておくと、具体的な対策が練りやすいです。
③引き止めや退職の引き延ばし
看護師不足:医療現場では常に看護師不足が問題となっており、一人の退職が全体の業務に大きな影響を与えるため、職場側はできるだけ退職を阻止しようとします。
引き継ぎの問題:専門性の高い看護業務では、引き継ぎの準備が容易ではありません。
特に急な退職や特定のスキルを持つ看護師の退職は、現場にとって大きな損失となるため、引き留めに発展しがちです。
患者ケアへの影響:看護師が減ることで患者ケアに支障が出る可能性があるため、上司や管理者は退職の影響を最小限に抑えようとします。
結果的に、退職時期を引き延ばしたり、引き留めようとする行動に出ることが多いです。
<トラブル回避のための準備>
退職意思を強く明確に伝える:退職の意思が変わらないことを強調します。
「決定事項であり、変更はない」という態度を示すことで、職場側が引き留めを諦める場合もあります。
曖昧な態度を取らず、毅然とした姿勢で退職を主張しましょう。
退職日を明確に設定する:退職日を明確に設定し、具体的な退職日を上司や管理者に書面で通知します。
「◯月◯日が最終出勤日である」と明記することで、引き延ばしを防ぐ効果があります。
また、職場の就業規則に従った通知期間(通常は1ヶ月前)を守って伝えると、スムーズに進む可能性が高まります。
文書で退職通知を提出:口頭での意思表明だけでなく、退職の意思を文書で正式に通知することが重要です。
退職届や退職願を提出すると、退職のプロセスが正式に始まり、引き留められにくくなります。
内容証明郵便で送ると証拠が残り、さらに安心です。
④退職時の有給休暇消化
人手不足:医療現場では、看護師が不足しているため、有給休暇の取得が難しい状況が続いています。
退職前に有給休暇を消化しようとすると、現場の負担が増えるため、職場がこれを認めたがらない場合があります。
暗黙のルール:医療現場では、退職時の有給休暇消化が困難であることが「当然」とされることもあります。
こうした暗黙のルールにより、退職時に有給休暇を取得しようとすると職場との摩擦が生じることがあります。
業務の引き継ぎ:有給休暇を消化しようとすると、業務の引き継ぎに支障が出ると考えられ、職場側が有給消化を嫌がるケースも多いです。
<トラブル回避のための準備>
有給休暇取得の意思を明確に伝える:有給休暇を消化する意向を、退職の意思と共に伝えます。
退職届を提出する際に、「退職日までに残りの有給休暇を消化する」旨を明記しましょう。これにより、有給消化の意志を職場側に明確に示すことができます。
計画的に有給休暇を申請:退職日を決める際、有給休暇の消化も含めたスケジュールを立て、早い段階で職場に共有します。
例えば、退職日を1ヶ月後に設定し、有給休暇の申請も同時に行うことで、職場側の準備期間を確保できます。
有給休暇の計画を文書で提出:有給休暇の取得計画を文書で提出し、証拠として残しておきます。職場側が有給休暇の消化に反対する場合でも、文書で提出しておくことで法的に権利を主張しやすくなります。
⑤後任の引き継ぎ問題
看護師不足による負担増:人手不足の医療現場では、一人の退職が現場に大きな影響を与えます。
特に、専門的なスキルや知識を持つ看護師が退職する場合、後任の確保や引き継ぎが難航することがよくあります。
業務の複雑性と特殊性:看護業務は、患者の病状や治療計画に合わせて調整が必要です。
そのため、業務の内容が複雑で、すべてを詳細に引き継ぐには時間がかかります。
また、患者ごとのケア内容が異なるため、全ての情報を正確に引き継ぐのは難しい場合もあります。
後任がすぐに決まらない:多くの医療現場で、退職者の後任をすぐに見つけるのは難しいことがあります。
後任が決まらないまま退職日を迎える場合、職場側から引き継ぎを理由に退職日の延期を求められることもあります。
<トラブル回避のための準備>
引き継ぎ計画を早めに立てる:退職の意思を職場に伝える際に、引き継ぎに関する計画も同時に提案します。
例えば、退職予定日までの期間をどのように使って引き継ぎを行うか、具体的にスケジュールを立てておくと、職場側も調整しやすくなります。
引き継ぎ資料を作成する:引き継ぎがスムーズに行えるよう、業務内容や患者のケア情報を文書化しておくことが重要です。
引き継ぎ資料には、業務手順、注意事項、患者の特徴などを詳細に記載し、後任がその資料をもとに対応できるように準備します。
こうした資料を用意することで、後任が決まらなくても次のスタッフが参考にできるため、トラブルを減らせます。
上司と引き継ぎスケジュールを確認:退職の意思を伝える際、上司と引き継ぎにかかる期間や内容を確認し、現実的なスケジュールを作成します。
引き継ぎが間に合わない場合や後任が未定の場合の対策も含めて話し合い、職場と協力して進めることが大切です。
後任がいない場合の対応策を考える:後任がいない場合でも、他のスタッフに引き継げる内容を整理し、負担が軽減されるよう配慮します。
また、引き継ぎ資料を上司や同僚と共有し、必要な時に活用できるように準備します。
専門性の高い業務に関しては重点的に引き継ぐ:特に専門性が高い業務や注意が必要な業務に関しては、重点的に引き継ぎます。
必要であれば、他のスタッフにその業務を特別に説明する時間を設け、重要なポイントをしっかり伝えるようにします。
⑥退職届の受け取り拒否
看護師不足と引き留め:医療現場では慢性的な看護師不足が問題になっており、職場側は可能な限り人員を確保したいと考えています。
そのため、退職を申し出た看護師に対して、上司や管理者が退職届を受け取らず、事実上の引き留め策を講じることがあります。
組織内の意思疎通の不足: 一部の職場では、退職の意思を上司に伝えても、その上の管理者層や人事部門に情報が正確に伝わらず、退職届が受理されないことがあります。
この場合、正式な手続きが進まないまま、退職が先延ばしになることがあります。
退職規定の理解不足:職場によっては、退職手続きや規定についての認識が不十分で、退職届の提出を職場が受け取る義務があることを理解していない場合もあります。
その結果、意図的に退職届を拒否されるケースが発生します。
<トラブル回避のための準備>
退職届の内容証明郵便による送付:退職届を上司や管理者が受け取らない場合、退職届を内容証明郵便で送付する方法があります。
内容証明郵便を利用することで、退職届を提出した事実と日付を証明できるため、法的にも有効な手段です。
送付先は職場の代表者(院長や経営者など)または人事部宛てにし、受け取ったという証拠が残るようにします。
内容証明郵便には送付記録が残り、職場側が退職届を受け取ったかどうかが明確に確認できます。
人事部門に直接提出:退職届を受け取られない場合、上司ではなく人事部門に直接提出することも有効です。人事部門に正式な書類として提出し、退職手続きを進めるよう依頼します。
また、提出の際には受領のサインをもらうか、メールで確認してもらうと記録が残ります。
退職通知のコピーを複数提出:退職届のコピーを作成し、管理者や人事担当者、上司など複数の関係者に配布することで、正式に退職を通知します。
この方法により、誰か一人が退職届を受け取らなかったとしても、他の関係者が認識していることで、手続きの妨げを減らせます。
⑦退職後の書類発行の遅延
職場の手続きが遅れる:看護師が退職することで、病院やクリニックの人事担当が手続きに追われ、書類の発行が後回しになることがあります。
また、手続きが複雑であるため、人手不足の職場では書類発行が遅れるケースが多々あります。
職場側の故意の引き延ばし:退職者への対応を意図的に遅らせる職場もあります。
これは、退職者に対する嫌がらせとして行われることがありますが、不適切な対応であり、法的に問題となる場合があります。
手続きの担当者が不在:病院やクリニックの規模が小さい場合、手続き担当者が不在で発行が遅れることがあります。
また、担当者が忙しく、書類発行までに時間がかかることもあります。
<トラブル回避のための準備>
書面で書類の発行を依頼する:退職の際に、書類の発行依頼を書面で提出しておくと、発行に関する証拠を残すことができます。
依頼内容には、具体的な書類名(例:雇用保険被保険者証、源泉徴収票、離職票など)と希望する発行期限を記載します。
定期的に発行状況を確認する:退職後、書類の発行状況を定期的に確認します。1〜2週間経っても書類が届かない場合は、再度連絡を入れ、いつまでに発行してもらえるかを確認します。
特に、離職票は失業給付の申請に必要なので、早めに取得する必要があります。
⑧退職金や給与の未払い
経営状況の悪化:病院やクリニックの経営が悪化している場合、資金繰りの問題から給与や退職金の支払いが滞ることがあります。
特に、規模が小さい医療機関では、突然の未払いが発生することがあります。
職場の意図的な遅延:一部の職場では、退職者に対する報復的な意図で退職金や給与の支払いを遅らせることがあります。
これは、退職者がすぐに次の職場に移れないようにする目的や、嫌がらせの一環として行われることがあります。
手続きの遅れ:職場の事務手続きが遅れている場合、退職者に対する給与や退職金の支払いが後回しになることがあります。
特に、退職者の人数が多い時期には、事務処理が滞る場合があります。
<トラブル回避のための準備>
就業規則と雇用契約書の確認:退職金や給与に関する規定が記載されているため、退職前に就業規則と雇用契約書を確認します。退職金の支払い条件や、給与の締め日・支払日などを事前に把握することで、支払いが正当に行われているか確認できます。
労働基準監督署への相談:給与や退職金が支払われない場合、労働基準監督署に相談することで、職場に対して指導を行ってもらえます。
労働基準監督署では、未払いに関する問題解決のサポートを提供しており、労働者の権利を守るための対策が取られることがあります。
⑨退職後の悪評や圧力
医療業界の狭いコミュニティ:医療業界は他の業界に比べてコミュニティが狭く、看護師同士が顔見知りであることも多いため、退職者に関する情報が噂となって広まりやすい環境にあります。
また、同業者間のネットワークが密接なため、悪い評判が転職先に伝わることもあります。
職場の引き留めや報復:職場が退職に納得していなかった場合、報復的な意図で退職者についての悪評を広めることがあります。
また、退職したことで業務に影響が出た場合、職場の一部の同僚や管理者が不満を持ち、それが噂として広がることもあります。
個人的な感情:看護師同士の人間関係が原因で、退職後に個人的な感情で悪評を流される場合もあります。
特に、仲が悪かった同僚や管理者が、退職者の評判を悪くするために噂を流すことがあります。
<トラブル回避のための準備>
円満な退職を心がける:退職理由や退職後の計画について、職場の人に対して丁寧に説明し、誤解が生じないようにします。
また、退職前に感謝の気持ちを伝え、最後まで責任を持って業務を行うことで、職場との関係を良好に保つことができます。円満な退職ができると、退職後の悪評リスクを減らすことができます。
悪評が広まっている場合は即座に対処:退職後に悪評が広まっていることを知った場合、すぐにその情報を発信している人物や職場に対して、状況の確認を行います。
誤解である場合は訂正を求め、意図的な悪評の場合は、その根拠や目的を尋ね、必要に応じて法的な手段を検討します。
悪評を気にせず前向きな行動を取る:悪評が気になる場合でも、次の職場で良い業績を残すことで、自分の価値を証明することができます。
悪評にとらわれず、転職先での業務に集中し、信頼関係を構築することで、自然と評判が改善されることもあります。
⑩損害賠償請求やペナルティ
急な退職による業務への影響:医療現場では、看護師が突然退職すると業務に支障が出ることがあります。
職場がこの影響を軽減するために臨時の人員を確保したり、他のスタッフに負担がかかった場合、その損害分を退職者に請求しようとすることがあります。
十分な引き継ぎができなかった場合:退職までの引き継ぎが不十分であると、後任が業務をスムーズに引き継げず、職場が混乱することがあります。
こうした場合、職場が引き継ぎ不十分による業務効率低下の損害を主張して請求を行うこともあります。
契約に基づくペナルティ:一部の職場では、労働契約書や就業規則に「ペナルティ条項」を盛り込んでいることがあります。
例えば、「退職の申し出は退職の3ヶ月前までに行うこと」や、「引き継ぎ不十分の場合、賠償責任を負う」といった内容です。
ただし、こうした契約が全て法的に有効であるわけではありません。
<トラブル回避のための準備>
引き継ぎを十分に行う計画を立てる:可能な限り、引き継ぎを計画的に行い、職場に実質的な損害が出ないように配慮します。
具体的には、業務マニュアルの作成や、後任への指導などを通じて、引き継ぎがスムーズに進むように努めます。
これにより、職場が損害賠償を主張する根拠を減らすことができます。
職場とのコミュニケーションを大切にする:退職の理由や状況について、職場の管理者や上司に理解を求め、誠実に対応します。
こうした姿勢を示すことで、損害賠償やペナルティを課されるリスクを軽減できます。